通学路
職場への通勤途中に中学校がある。
毎朝、その隣の通学路を通って職場へ向かうのであるが、初夏のあたりから学校のまわりを一人とぼとぼと歩いている女子中学生をたまに見かけるようになった。
今日もその彼女を見かけた。
私の出勤時間はやや遅い。
通学路はすでに学生達の姿は他になく、制服姿の彼女だけが他の通行人に混じり一人妙に浮いている状況だ。
この時間帯ならば、本来学生達は普通に授業を受けている時間であろう。
しかし彼女は校門へ入るでもなく、学校横の通学路を行ったり来たりしているだけである。
私は職場に足を向けつつ何気に動向をうかがっていると、どうやら彼女は人目を気にしてウロウロしているようだ。
進んだと思えば引き返す、そんなことを何回も繰り返している。
直に彼女は周囲を気にしつつ角を曲がって姿を消した。
角の向こうには校門があるはずだ。
やれやれ、ようやく校舎に入ったのかな?
思っていた矢先に彼女が再び角から姿を現した。
どうやらその向こうから通行人が来たようだ。
彼女はこちらに向きを変えようしたところ、今度は私が向かって歩いてくる事に気がついたらしい。
彼女は角の向こうとこちらを交互に見ながら、何かしら躊躇しているようだった。
と、突然こちらに向かって走り始めた。
手提げ鞄を持ちながら顔を下に向けつつ息を切らして私の横を通り過ぎていく。
すれ違いざまに彼女にチラリと視線を向けた。
伏せ気味の顔から表情が取れる。
真面目で大人しそうな感じの女の子だ。
おいおい、学校はそっちじゃないぞ。
そう思いながら、後ろに走り去っていった女の子に振り向くことはしなかった。
今はうるさい時代である。
見知らぬ児童に話しかけただけでも変質者として通報される可能性のあるご時世だ。
彼女が学校の前で何をしたかったのかは分からない。
私には何もできない。
友人らと一緒でもいい。彼女が普通の時間に登校してくれることを願うばかりである。
コメント