今日は久し振りに不思議ネタである。
私がまだ子供の頃のことだ。
年齢は5、6歳だったと思う。
兄と幼い弟を連れた母親がしばらく家を留守にするために、私は母の実家に数日預けられることになった。
※写真と本文は関係ありません※
Nikon Df+AF-S NIKKOR58/1.4G
母の実家はとても古い家だ。
預けられた初日、夕食も入浴も済んでマッタリとしている私に祖母は、もうじき小学生になるのだからもう一人で寝ることができるねと、有無を言わせずに二階の寝室に押し込められた。
当時、寝るときには必ず母に添い寝していたもらっていたのだが、この時は居候の様な身であるために自身の状況から祖母と一緒に寝ることを諦め二階に向かった。
寝室は二階にある和室6畳間だ。
階段を登って折り返す薄暗い板張り廊下の途中にある。
母の学生時代に使っていた部屋であるが、そこは半分物置のようになっていた。
母の実家は経師屋だったので、あちらこちらに襖や障子の桟、屏風が立てかけてある。
その隙間を縫うように布団が敷かれてあった。
祖母に電気を消されてしまったため、障子窓から入る街灯の明かりがうっすらと暗くなった室内を照らしている程度だった。
枕元にはガラスケースに収められた日本人形がいくつも置いてある。
障子越しの街灯の光が微妙な陰影を作って妙に怖い。
人形の方を見るとビビるので、早々に布団を被って寝ることにした。
※写真と本文は関係ありません※
Nikon Df+AF-S NIKKOR24-85mm/3.5-4.5G ED VR
いつの間にか寝入ってしまったようだ。
ふと、何かの物音で目が開く。
ポスッポスッと何かを叩く音で意識が覚めたようだ。
室内が少し暗い。街灯の明かりが少なくなっている。深夜になっているようだ。
どうやら襖を指で叩くとこんな音がする。
誰かがいたずらしているのだろうか。
祖父や祖母はこんな事はしない。従兄弟だろうか。いや、こんな時間にいたずらはないだろう。
目を開けてキョロキョロと辺りを見渡すと既に音は消えてしまったようである。
階下からはテレビから出る人の声が小さく聞こえる。
どうやらまだ祖父祖母等は起きているようだ。
気にしないようにして布団を被った。
Nikon Df+AF-S NIKKOR24-85mm/3.5-4.5G ED VR※写真と本文は関係ありません※
だが、再び音が聞こえ始める。
ポスッポスッ・・・・。
やはり襖を叩く音のようだ。左側から聞こえる。
左にあるのはこの部屋の入り口である襖だけだ。
そっと布団から覗いてみた。
音は突然止んで、うっすら見える白い襖のみが異様な存在感を醸し出しながら鎮座しているだけだった。
襖を見つめながらしばらくジッと耳を澄ましてみた。
何の音もしない。・・・・風だろうか。
気を取り直して、反対側を向きながら布団を被り直した。
ポスポスッ・・・・。
心臓が凍り付くほど驚いた。
目を離した途端、再び叩く音が始まったのだ。
誰だろう。誰が叩いているのだろう。
どうやら襖を叩いている主は右下の角の部分、つまりはずいぶん低いところを叩いているようだ。
ポスッポスッポスッ・・・・。
しつこく叩き続けている。
これは偶然なのだろうか、心なしか段々音が大きくなっている気がする。
かなり怖くなっていたのだが、もう一度勇気を振り絞って襖側へ素早く向いてみた。
音が続いていれば風だろう。だが音が止んだら・・・・。
※写真と本文は関係ありません※
Nikon Df+AF-S NIKKOR24-85mm/3.5-4.5G ED VR
・・・・・・。
音は止んでいた。
襖を見つめると音が止み、目を離すと音が始まる。
急に激しい恐怖感が心の奥底からフツフツと沸き上がってくる。
この襖の向こうには一体何がいるのだろう。
ペットのいないこの家には、現在私と祖父祖母以外はいないはずだ。
布団を被りながら向こうにいる何かを想像しているだけで恐ろしくてチビリそうだった。
声を出して祖父祖母を呼ぼうか。
でも呼んで気がつかなかったらどうしよう。
いや、それよりも声を出して呼んだら、祖母でなくそいつが入ってきたらどうしよう。
なんて恐ろしい・・・・。
布団を被り中で震えていると再びポスッポスッと叩いている。
あぁ・・・・もうダメだ。この部屋を出よう。
襖を開けて板張りの廊下を右に進めば階下に降りる階段がある。
しかし、出たら襖の右端を叩いている奴の姿を見てしまう・・・・。
そうだ、反対側を見ながら襖を開けよう。
そして見ないようにして廊下を走りながら階段を降りれば良いのだ。
震える手で布団をめくりながら襖をジッと見つめる。
その瞬間に音は止んだ。
いつこの部屋を出るのか。タイミングを伺う。
しばらくの間、静寂が流れた。
※写真と本文は関係ありません※
Panasonic DMC-GH3+Leica DG Summilux25mm/1.4ASPH.
意を決して布団から跳ね起きた。
襖の引き手は左にあるので、左から右に開けねばならない。
襖を全部開けると奴を見てしまうかも知れないので、半分ほど開けて廊下に出るつもりだった。
引き手に指をかけて力を入れる。
ガラッ!
あ、思ったより開きすぎてしまった。
ヤバい、見えちゃう?
私はその瞬間に見てしまった。
唐草模様のある風呂敷を被った西瓜ほどの小さなものが壁に張り付くようにいることを。
そして、風呂敷の隙間かららせん状の細長いしっぽがクルクルッと上に向かって伸びていたモノを。
瞬間的にサルが風呂敷を被っていると感じた。
ぎゃあぁぁぁぁぁぁ・・・・!
おばあちゃあぁぁぁぁぁん!!
泣き叫びながら階段を駆け下りた。
下では祖父と祖母はテレビを見ていたが、あまりにもの私の乱心振りを見てもう今日は一人では寝かせられないと一緒に寝室で寝てくれることになった。
翌日は再び一人であの部屋に寝かせられた。
猛烈に拒否したが祖母は厳しい人だったので、私の非現実的な話には耳を貸してはくれなかったのだ。
だが、あの夜以降に同じ現象が起こることはなかった。
後日、母にも聞いたがそのようなことは今までにもなかったという。
※写真と本文は関係ありません※
Panasonic DMC-GH3+Leica DG Summilux25mm/1.4ASPH.
あの唐草風呂敷が強烈だったので、未だに唐草模様を見るとこの時のことを思い出す。
あれは一体なんぞや・・・・。
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