不本意
もう30年ほど前のことだ。
大学生の時に危機一髪だったことがある。
Nikon Df+Tamron SP45mm/1.8VC Di USD
大学時代、落とすことの出来ない重要な科目の試験日の事だ。
試験前に、当時メジャーだったドットインパクトプリンタ用紙の裏に勉強した重要事項をビッシリと書き込んだアンチョコをひたすら読んでいた。
大学の研究室からいらない用紙としていつも大量に頂いてたものだ。
ミシン目が付いているので適当な長さに切り離し、裏面を書き取り用紙やメモ用紙として活用する。これが私の試験直前のスタイルだった。
教官が試験を始めるので席に着けという号令をかけた。
私は決められた席に座り、配られてきた問題用紙を裏にして開始の合図までじっと待つ。
「開始」のかけ声と共に問題用紙をめくってひたすら試験に集中した。
Nikon Df+Tamron SP45mm/1.8VC Di USD
A3サイズの問題用紙が2枚。
一枚目が終わり二枚目に突入する。
問題も終盤に入り、時間を確認すると若干余裕のあるペースだ。
コレなら見直しの時間も十分にとれる。
そう感じたとき、違和感を感じた。
あれ?問題用紙がもう一枚ある。
こんなに量があるのか?
一瞬焦ったが、落ち着いて二枚目をめくり三枚目を見た。
そこには私が直前に暗記していたアンチョコが1枚残っていたのだ。
Nikon Df+Tamron SP45mm/1.8VC Di USD
頭が真っ白になった。
慌てて問題用紙を上に戻す。
コレはマズい・・・・。
手を上げて正直に言うべきか・・・・。
イヤ、この科目の教授は厳しくて有名だ。
故意ではないとしてもこの試験結果はまず認められないだろう。
重要科目のため周囲をチェックする教官の数は多い。
これは・・・・参った・・・・。
Nikon Df+Tamron SP45mm/1.8VC Di USD
学費を出してくれた両親の顔が浮かぶ。
大事になったら顔向けできない。
しばし悩んだ末に、不本意ではあるが隠し通すことに決めた。
普段の自分からは考えられないような選択だった。
問題は絶えず周囲を回っている教官の数だ。
折って畳むような不自然な行為ではたちまち見つかってしまうだろう。
答案はテスト終了後に教官が後ろの列から順に回収して集めることになっている。
その拾われるタイミングを狙って、死角上の机の中へ滑り込ませる方法に決めた。
もう緊張して緊張して、残り時間に残っていた問題を解いたのだが、自分でも何を書いたのか何も覚えていない状況である。
当然アンチョコなどのぞき込もうなどという余裕などない。
Nikon Df+Tamron SP45mm/1.8VC Di USD
そして試験終了の合図が鳴り、教官が左後から答案用紙を回収してくる。
いよいよ私の番だ。
心臓のドキドキが外にまで音を立てているようだ。
答案用紙より若干小さめのB4プリンタ用紙である。
両側にはミシン目が付いており、これは前もって切り取ってあるので比較的コンパクト。
2枚の答案用紙よりずっと小さく隠せている。
教官が答案用紙を持ちやすいように用紙の角を机の縁から出しておく。
そして、その下にはアンチョコの端をつまんだ私の指が隠れているのだ。
教官が私の答案に手をかけて取り上げた。
一発勝負である。自分の人生の運をここで使い果たすことになるかも知れない。
用紙を引き上げるその瞬間を狙って同じ速度で・・・・
Nikon Df+Tamron SP45mm/1.8VC Di USD
・・・・辛うじてバレなかった。
試験後は10歳老けたような気がした。
もう、こんなケアレスミスは絶対に行うまいと心に誓ったのだ。
この件に関しては大学の友人らにもずっと黙っていた。
今思い出しても胸が締め付けられるように冷や汗をかく。
この葛藤から解放されるためにも今からでも懺悔したいものだ・・・・。
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